「AIの仕組みなんて知らなくても、Difyは使えるんじゃないの?」——そのとおりです。ただ、ほんの少しだけ用語を知っておくと、Difyの設定画面でつまずかずに済みます。この記事では、LLMとは何かをはじめ、Difyを使うときに必ず出会う生成AIの基礎知識だけを、初心者向けにやさしく整理します。数式は一切使いません。
生成AIとLLMの関係
まず、よく混同される「生成AI」と「LLM」の関係を整理します。
生成AIとは、文章・画像・音声・動画などの新しいコンテンツを作り出すAIの総称です。その中で、特に文章(言葉)を扱う中心的な仕組みがLLMです。
つまり、生成AIという大きな箱の中に、文章担当のLLM、画像担当の画像生成AI……といった専門家がいるイメージです。Difyで主に使うのは、この文章担当のLLMです。
LLMとは?一言で言うと
LLMは「Large Language Model」の略で、日本語では大規模言語モデルと呼びます。名前は難しそうですが、やっていることはシンプルです。
LLMは、インターネット上の膨大な文章を学習し、「ある言葉の次に来る、もっともそれらしい言葉」を予測する仕組みです。「こんにちは、今日はいい」と入力されたら、「天気」と続けるのが自然だ、と確率的に判断しているわけです。
この「次の言葉を予測する」を高速で何度も繰り返すことで、まるで人間が書いたような文章が出来上がります。ChatGPTが自然に会話できるのも、この仕組みのおかげです。
ここで大切なのは、LLMは意味を人間のように理解しているわけではない、という点です。あくまで「学習した膨大な文章のパターンから、統計的にもっともありそうな続き」を選んでいるだけです。
とはいえ、学習した文章の量が桁違いに多いため、結果として驚くほど自然で役に立つ答えを返してくれます。この「賢いけれど、意味を分かっているわけではない」という感覚を持っておくと、後で出てくる注意点も腑に落ちやすくなります。
Difyを使うと必ず出会う3つの用語
LLMのイメージがつかめたら、次はDifyの画面でよく目にする3つの用語を押さえましょう。この3つが分かれば、設定でほとんど迷わなくなります。
トークン
トークンとは、AIが文章を処理するときの文字のかたまり(単位)です。AIは文章をそのまま読むのではなく、いったん細かいトークンに分解してから扱います。
イメージとしては、長い文章を細切れにした付箋のようなものです。文字とトークンの対応はAIのモデルによって変わりますが、日本語ではおおむね1文字あたり1トークン前後を目安に考えておけば十分です。
なぜこの用語が大事かというと、AIの利用料金はトークンの量で決まることが多いからです。長い文章をやり取りするほどトークンが増え、費用も増えます。料金の詳しい話は別の記事で扱いますが、「トークン=処理と料金の単位」とだけ覚えておけば十分です。
コンテキスト
コンテキストとは、AIが一度に見渡せる文章の範囲のことです。「文脈」と訳されることもあります。
これは、AIの短期記憶の広さ、あるいは作業机の広さにたとえると分かりやすいでしょう。机が広ければたくさんの資料を一度に広げられますが、机からあふれた古い資料は見えなくなります。
チャットボットと長く会話していると、最初のほうに話した内容をAIが「忘れた」ように見えることがあります。これは、会話が長くなってコンテキスト(机)からあふれてしまったためです。AIの記憶力が悪いわけでも、故障でもありません。仕組み上、そういうものなのです。
この性質を知っておくと、「長い会話ではときどき要点を伝え直す」「一度に詰め込みすぎない」といった、ちょっとした工夫が自然とできるようになります。Difyでアプリを作るときにも、この考え方が地味に効いてきます。
モデル
モデルとは、いわばAIの頭脳の種類です。世の中にはGPT、Claude、Geminiなど複数のLLMがあり、それぞれ得意なことや性格が少しずつ違います。
Difyでは、こうしたモデルを選んで使えます。料理でいえば、同じレシピでも「どの料理人に作ってもらうか」を選べるようなものです。
モデルによって、得意な言語、回答の速さ、利用料金、長い文章をどれだけ扱えるか(先ほどのコンテキストの広さ)などが異なります。だからこそ「どの用途にどのモデルを使うか」を選べることが、Difyのような道具の強みになります。
とはいえ、最初から最適なモデルを見極める必要はありません。どのモデルを選べばよいかには考え方のコツがありますが、それは専門の記事で扱います。【内部リンク:記事014】(公開後追加)ここでは「モデル=選べるAIの頭脳で、種類によって個性がある」で十分です。
LLMが「もっともらしく間違える」理由
もうひとつ、大切な性質があります。LLMは、堂々と間違えることがあるという点です。
思い出してください。LLMは「次に来るそれらしい言葉」を予測しているのでした。つまり、事実かどうかを確かめているのではなく、それらしさを組み立てているのです。
そのため、実際には存在しない情報を、いかにも本当らしく答えてしまうことがあります。この現象をハルシネーション(英語で「幻覚」の意味)と呼びます。
たとえば、実在しない本のタイトルや、存在しない製品の機能を、さも当然のように説明してしまうことがあります。困るのは、その口ぶりがあまりに自然で自信ありげなため、知らないと信じ込んでしまう点です。
だからこそ、AIの答えは「下書きや相談相手」として受け取り、重要なことは自分で裏を取る、という使い方が安心です。この前提を踏まえておくと、後のシリーズで「自社の資料にもとづいて答えさせる」といった工夫が、なぜ必要になるのかも見えてきます。
これはLLMの根本的な性質なので、Difyを使ってもゼロにはできません。工夫で減らすことはできますが、「AIの答えは必ず正しい」と思い込まないことが、AIとうまく付き合う第一歩です。
ここまで分かればDifyは十分に始められる
最後に、学んだ用語がDifyのどこで出てくるかを地図として示します。
| 用語 | どんなもの | Difyでの登場場面 |
|---|---|---|
| LLM | 次の言葉を予測して文章を作る仕組み | アプリの回答を生み出す中心 |
| トークン | 文章を処理する単位 | 利用状況・料金に関わる |
| コンテキスト | 一度に見渡せる範囲 | 長い会話で「忘れる」挙動の理由 |
| モデル | 選べるAIの頭脳の種類 | モデル選択の設定画面 |
| ハルシネーション | もっともらしい誤り | 回答の正しさを過信しない理由 |
この5つがぼんやりとでもイメージできれば、Difyの設定画面に出てくる言葉に臆することはありません。完璧に理解する必要はなく、実際に触りながら少しずつ馴染ませていけば大丈夫です。
まとめ
この記事では、Difyを使うために必要な生成AI・LLMの基礎だけを整理しました。要点は次のとおりです。
- 生成AIは新しいコンテンツを作るAIの総称で、その中で文章を扱う中心がLLM(大規模言語モデル)
- LLMは「次に来るそれらしい言葉」を予測して文章を作る
- Difyでよく出会う用語は「トークン」「コンテキスト」「モデル」の3つ
- LLMはもっともらしく間違える(ハルシネーション)ことがあり、答えを過信しない
仕組みが少し分かると、AIが「どう指示すれば、思いどおりに動いてくれるのか」が気になってきます。次の記事では、そのAIへの指示=プロンプトとは何か、なぜ書き方で結果が変わるのかを、やさしく解説します。
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