Difyを始めようと思ったとき、最初にぶつかるのが「Cloud版とCommunity版、どちらで始めればいいの?」という疑問です。名前だけを見ても違いが分かりにくく、ここで立ち止まってしまう人は少なくありません。この記事では、DifyのCloud版とCommunity版の違いという観点で2つの提供形態を比べ、手軽さ・費用・データ管理・運用負担という4つのものさしで、自分に合った選び方を整理します。
なお、提供形態の名称や利用条件は変更されることがあります。本記事の内容は2026年8月時点のDify公式情報にもとづいています。
Difyには2つの始め方がある
Difyには、大きく分けて2通りの始め方があります。
- Cloud版:Difyの提供元が用意したサービスを、そのまま使わせてもらう形
- Community版:Difyのソフトウェアを、自分のサーバーで動かす形(セルフホスト)
「セルフホスト」という言葉が出てきました。これは、サービスを他社に任せるのではなく、自分(や自社)が用意したサーバーの上でソフトウェアを動かすことを指します。
料理でたとえるなら、Cloud版は「できあがった厨房を借りて料理する」、Community版は「自分で厨房を用意して料理する」ようなイメージです。どちらでもDify自体は使えますし、できることに大きな差があるわけでもありません。変わってくるのは、始めるまでの準備と、その後の責任の重さです。
Cloud版とは
Cloud版は、Difyの提供元が運用しているサービスを、ブラウザからそのまま使う方法です。
いちばんの魅力は、すぐに始められる手軽さです。自分でサーバーを用意する必要がなく、アカウントを作ればその日から触りはじめられます。ソフトウェアの更新やサーバーの管理といった裏側の面倒は、提供元が引き受けてくれます。
そのぶん、動いている環境そのものは提供元の管理下にあります。細かく自分好みに作り替えたり、データを完全に自分の手元だけで扱ったりといったことは、Community版ほど自由にはできません。
とはいえ、はじめてDifyに触れる段階でそこまで求める人は多くありません。「まず気軽に試したい」「難しい準備はしたくない」という人には、Cloud版が自然な入り口になります。
Community版とは
Community版は、Difyのソフトウェアを自分のサーバーに設置して動かす方法です。Difyはオープンソースとして公開されており、それを使って自前で環境を構築できます。
Community版の魅力は、自由度の高さと、データを自分の管理下に置けることです。自社のサーバーの中でDifyを動かすので、扱うデータを外部のサービスに預けずに済みます。
たとえば、顧客情報や社外秘の資料をAIに扱わせたいけれど、外部のサービスには置きたくない——そんな要件がある組織にとっては、この点が決め手になります。機密情報を社外に出したくない、といった場合に向いているわけです。
ただし、その自由と引きかえに、運用の責任が自分に生じます。サーバーの用意、設置作業、動かし続けるためのメンテナンス——こうした手間を自分たちで負う必要があります。「自由に使える」ことは「自分で面倒を見る」ことと表裏一体だ、と覚えておきましょう。
なお、具体的な構築の手順や必要な準備については、後の記事であらためて扱います。【内部リンク:記事085】(公開後追加)
4つの観点で比較する
ここまでの違いを、判断しやすいように4つの観点で並べてみます。
| 観点 | Cloud版 | Community版(セルフホスト) |
|---|---|---|
| 手軽さ | アカウント登録ですぐ使える | 自分でサーバーを用意・構築する必要がある |
| 費用の考え方 | 利用するプランに応じた料金がかかる | ソフト自体は無償で使えるが、サーバー等の費用と手間がかかる |
| データ管理 | 提供元の環境で扱われる | 自分の管理下に置ける |
| 運用負担 | 提供元が管理してくれる | 更新・保守を自分で行う |
こうして並べると、Cloud版は「手軽さ」に、Community版は「自由度とデータ管理」に強みがあると分かります。どちらが上ということではなく、何を優先したいかで向き・不向きが変わります。
この表で特に見てほしいのは、「手軽さ」と「自由度・データ管理」がちょうど裏返しの関係になっている点です。手軽さを取れば管理は提供元に任せることになり、自分で管理する自由を取れば手間も引き受けることになります。両方を同時に最大化する選択肢はない、と考えると、自分がどちらを重く見るかがはっきりしてきます。
なお、費用については「考え方」だけを示しました。具体的な料金の中身は次の記事でくわしく扱います。
どちらを選べばいい?
では、自分はどちらを選べばよいのでしょうか。タイプ別に整理します。
Cloud版が向いている人:
- まずは気軽にDifyを試してみたい
- サーバーの準備や管理に時間をかけたくない
- 非エンジニアで、なるべく手間なく始めたい
Community版が向いている人:
- 扱うデータを自社の管理下に置きたい(機密情報を外部に出せない、など)
- 自由に環境をカスタマイズしたい
- サーバーの構築・運用を自分たちで担える体制がある
迷ったときの結論をひとつ挙げるなら、まずはCloud版で試してみるのがおすすめです。手軽に始められるぶん、Difyがどんなものかを最短で体験できます。実際に触ってみて、「データを自前で管理したい」といった必要が出てきたときに、あらためてCommunity版を検討すればよいのです。
この方針にそって、本シリーズでもこれ以降は、まずCloud版を前提に話を進めていきます。手順の説明がひとつに定まるので、読みながら実際に手を動かしやすくなるためです。もちろん、これはCommunity版が劣るという意味ではありません。目的に合えばCommunity版はとても頼れる選択肢ですし、Cloud版で基本を身につけた経験は、後からCommunity版に移るときにもそのまま活きてきます。まずは入りやすい方から始める、という順番だと考えてください。
後から変えられる?
「最初にCloud版で始めたら、あとでCommunity版に移れないのでは」と心配になるかもしれません。結論から言えば、提供形態を後から変えることは考え方としては可能です。
ただし、移すときにはデータの取り扱いなど、いくつか気をつける点があります。その具体的な進め方は、専用の記事であらためて紹介します。【内部リンク:記事093】(公開後追加)まずは「入り口を選び間違えても、後から見直せる」と考えておけば、最初の一歩は気楽に踏み出せます。
まとめ
この記事では、DifyのCloud版とCommunity版の違いと選び方を整理しました。要点は次のとおりです。
- Cloud版=提供元のサービスをそのまま使う(手軽)/Community版=自分のサーバーで動かす(自由・自己管理)
- 手軽さ・費用・データ管理・運用負担の4観点で、優先したいものによって向き・不向きが変わる
- 迷ったらまずCloud版。本シリーズも以降はCloud版を前提に進める
- 提供形態は後から見直すこともできるので、最初の選択に気負いすぎなくてよい
始める版のイメージがついたら、次に気になるのは「どのくらい費用がかかるのか」でしょう。次の記事では、Difyの料金プランとコストの基本を、はじめての人にも分かるように整理します。Difyの料金プランとコストの基本
Difyがどんな道具かをまだつかみきれていない方は、全体像を整理した記事もあわせてどうぞ。Difyとは何か?できること・できないことを整理する